副院長ブログ(「インシュリン物語」を読む⑧四 インスリンを理解するために その6 糖質と脂肪)
「インシュリン物語」を読む学習。11月14日は世界糖尿病デーでした。
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糖質に富んだ食物は、小麦・米・大麦・ライ麦・燕麦・とうもろこしのような穀物であって、パンやウドンのような製品もそうである。
蜜やジャム・シロップのような澱粉質の甘い食物も糖質に富んでいる。
砂糖は糖質そのものであるが、穀類としての製品は糖質が大部分であってもその他に蛋白や脂肪も含んでいる。
主として糖質を含んではいるが、量の少ないのは果物と野菜である。(果物は1960年当時の、ですね)
ジャガ芋のような野菜はカリフラワーやセロリのような野菜よりも「利用可能」な糖質がずっと多い。
「利用可能」というのは、セロリのせんいのように、人間の消化管が消化できないセルローズという糖質が大部分であるが、動物のなかには、たとえば牛はセルローズを消化してエネルギーを得ることができるものがあるからである。
セルローズ糖質のカロリーは人間の食事中のカロリーを計算するときには入れないのである。
糖質を消化するとき、身体はこれをブドー糖に変えてエネルギー源にする。
ブドー糖は糖尿病のコントロールができないときには血液の中にたまり、そのいくらかは尿に出ることがある。
糖質の食物は吸収が早いので、その代謝に必要なインシュリンがある限り、手早いエネルギー源として最もよいものである。
ここでもインシュリンが利用の速度に関係することが示されている。
糖質は人間の食物エネルギー源として最も重要なものであるが、脂肪もまた多くの国々で食物からのエネルギーの重要な部分を担っている。
動物油・植物油・バター・マーガリン・脂肪質の肉・卵黄・クリームなどは消化し吸収し代謝されうる脂肪に富んでいる。
一方、鉱物油は下剤に使われることもあるように、消化されずに排泄されエネルギー源にならない。
脂肪は糖質よりも吸収も利用もゆっくりで、糖尿病者のエネルギー需要の大部分をまかなうエネルギー源に適していると考えている医師もある。
また、十分にインシュリンが供給されていれば、我々が食べる糖質のかなりの部分が体内で脂肪に変えられることもわかっている。
この脂肪は、皮下や体組織のまわりの内部に蓄えられて、必要に応じて使われる。
生化学者の中には、ケトン体として知られている酸性の物質は脂肪がエネルギー源として使われる時の崩壊産物であると考えている人がある。
そしてこれらのケトン体は体組織によって処理されるので、血液中には普通は痕跡的にあるにすぎないと考えられている。
長い間糖質を食べない正常人やコントロールができていない糖尿病者では、身体の脂肪組織は消失して血液・尿および呼気中のケトン体が増す。
これらの物質が過剰にあると糖尿病者は「ケトージス」とか「アシドージス」とよばれている状態に陥り、しばしば悪心・嘔吐を伴う危険な状態となる。
ケトージスのある非糖尿病者が糖質をたべると通常は極めて速やかにケトージスが減少する。
インシュリンの注射も同様の効果をみるのが普通である。
このように、糖質代謝をコントロールするホルモンと普通考えられているインシュリンは体内の脂肪の正常な利用のためにも不可欠のようにみえる。
(次回蛋白質、ミネラルの話に続きます)
参考書:インシュリン物語 G.レンシャル・G.ヘテニー・W.フィーズビー著 二宮陸雄訳 岩波書店 1965年発行 1978年第12刷版