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副院長ブログ(「インシュリン物語」を読む㊶-五 糖尿病 1 糖尿病の諸型 その1 )

[2026.09.14]

これまでを振り返りますと、

2023年4月このブログで、インシュリン物語の本を読んでいきます、と始めました。

2023年5月、最初が五章の糖尿病の6 糖尿病のための錠剤、という部分からでした。

インシュリン物語は

一 インシュリン以前

二 発見

三 新しい治療

四 インシュリンを理解するために

五 糖尿病

という五章に分けて書かれています。

五の6を読んで、四に12ヶ月をかけ、それから一に戻って前回まで読み進めてきました。

さて前回に三が終わって先ほど四を見たときに、あれ?読んだ気がする、と思いましたが、やはり読んでいました。

四に1年もかけていたとはびっくり。

そこからまた2年かけて本の最初から読み始めて、また戻ってきました。

あとは五を1から読み始めたら、いよいよ丸一冊読み終えることになります。

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インシュリンが発見されるずっと以前、フォン・メーリンとミンコフスキーが膵臓と糖尿病の関連を明らかにした時よりも以前には、糖尿病は単一の疾患ではなく、患者によって経過も症状も違う多様な疾患のあつまりであると考えていた医師さえもあった。

1880年には、フランスの内科医F・ランセローは人間の糖尿病は単一の疾患ではないと結論し、次のように記している。

『ある特定の病気には、特定の原因と、特徴的な発症と、特定の解剖学的病変がある。糖尿病にはこのようなことがあてはまらない。その病因は不明であり、その発症進展は千差万別で、ある患者は40年以上も生き永らえるのに、ある患者は2、3年の内に、、、、、その病変所見もさまざまである。したがって今日、糖尿病として知られているものは単一の病気ではなく、まさに病理学的症候群である。この症状から、二つの異なる病型を分けるとするれば、痩せ型糖尿病(le diabete maigre)と肥満型糖尿病(le diabete gras)に分けられよう。』

『肥満型糖尿病は何時とはなしに知らないうちに起こってくる。最初の徴候は頻尿や糖尿は伴わない肥満であって、肥満がこの型の糖尿病の初発症状となり、少しずつ少しずつ肥満は著明になり、その間には患者自身も病気を忘れてしまう程の休止期がある。生命には別条はなく、10年、15年、20年あるいは30年以上も続く。しかし、それでもやはり、結局は糖尿があるために、でき物・四肢の壊疽・肺炎・肺結核など多種多様な病変が招来される。』

これと対照的なのはランセローの痩せ型糖尿病の記載である。

『痩せ型糖尿病は健康状態は極めて良いのに起こってくる。患者は尿意が頻繁で、食欲が増強し、のどがかわくのに自分ながら驚く。しかし、もっと驚かされるのは、どんどん痩せてくることである。主な徴候たる糖尿はどの例でも見られる。1日の尿量は5㍑から10㍑にも達し、1日の尿糖の量は400から900gにも達する。これらの現象に加えて知的能力と筋肉の力が急速に衰えてくる。』

『この型の糖尿病の経過は連続的であって、進行的に、、、』

『痩せ型糖尿病は、、、かなり多くの症例では、同一の局所的病変を示すのが常である。この病変は膵臓の多少とも完全な破壊を伴った萎縮である。』

ランセローはここに記したような貴重な、驚くほど正確な描写を、全く臨床観察だけから、シャーロック・ホームズばりに帰納分析したのである。

彼はまだ、痩せ型糖尿病が膵臓からの消化液の欠如によると信じて、患者に膵臓の抽出物(パンクレアチン)を与えさえした。

医学史のこの時点において、痩せ型糖尿病は膵臓がホルモンをつくれないからであると考えなかったのは無理もないことである。

半世紀後にアメリカのL・ニューバーグとJ・コンが肥満型糖尿病の70パーセント近くは、体重を正常許容範囲内に減らせば、「すべての」糖尿病徴候が消え失せることを見出したのを、もしランセローが生きていればどんなにも興味をもって聞いたことであろうか。

ランセローから8年後に、フォン・メーリンとミンコフスキーが犬の膵臓を外科的に全部とり出すと、消耗性の致命的な糖尿病が起こるとの報告が医学界の注目を集めた。

1921年のバンティングとベストによるインシュリンの発見に続いて、年齢や種類を問わずあらゆる人の糖尿病と膵臓剔出犬の糖尿病をインシュリンがコントロールし得たことによって、かつてランセローが求めた「特異的な解剖学的病変」の場所として膵臓に注意を集中させた。

こうして、インシュリン発見後数年を出ずして、糖尿病の原因と病型の差異に関する問題は再燃した。

ドイツのF・ベルトラムは糖尿病者を、新治療剤インシュリンと関係づけながら、それに対する臨床的反応を加味して分類した。

彼はインシュリン欠乏糖尿病(Insulinmangeldiabetes)と、インシュリンの調節効果に抵抗ないし対立する何かがあるという意味での

反調節糖尿病(Gegenregulationsdiabetes)とに分類した。

《この章はあと二回に渡り読んでいきます》

参考書:インシュリン物語 G.レンシャル・G.ヘテニー・W.フィーズビー著 二宮陸雄訳 岩波書店 1965年発行 

 

 

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