副院長ブログ(免疫システムを知る⑩獲得免疫-e.活性化B細胞→プラズマ細胞)
抗原特異的な「獲得免疫」という仕組みの話が続いています。
B細胞はAという細菌を食べてAという細菌由来の「MHCクラスⅡ+抗原ペプチド」を提示して抗原特異的なT細胞抗原認識受容体をもつ活性化ヘルパーT細胞が結合し、B細胞から出たCD80/86という補助刺激分子が活性化ヘルパーT細胞のCD28に結合して刺激を入れると、活性化ヘルパーT細胞のCD40LがB細胞のCD40に結合して刺激を入れ、活性化ヘルパーT細胞から放出されたサイトカインをB細胞は浴びて完全に活性化します。というところまで勉強しました。
活性化B細胞は増殖して数を増やすときに、B細胞抗原認識受容体の抗原結合部位に突然変異をおこし、より強く抗原につくようになるB細胞抗原認識受容体ができたり、全くくっつかなくなる受容体もできたりします。いろいろな抗原は一箇所に集めてられFDC(Follicular Dendritic Cell 濾胞樹状細胞)という細胞に陳列されます。活性化B細胞は突然変異をおこしながら増殖してFDCまで行って抗原にぴったりつくかどうか判定を受け、抗原に合うB細胞抗原認識受容体をもつ活性化B細胞だけがプラズマ細胞となることを許され、抗体産生をおこなうようになります。このことを親和性成熟といいます。
抗原に対する抗体は免疫グロブリンといわれIgと略して書きます。抗体はY字の構造でその先端の構造が1000億種類以上ありどんな抗原が来てもそれに結合する抗体が用意されます。抗体の形にいくつかの種類があり、それがクラスと分類されますがそのうちのMクラス、GクラスについてはIgM、IgGと書きます。
B細胞の細胞膜に発現している抗体はIgMで、プラズマ細胞になるとIgGという抗体を産生するようになることが多くなります。IgMよりもIgGのほうが抗体の働きとしては強力です。
理由はわからないようですが、B細胞は(黒崎先生の御研究によると)最初はIgMを作る仕組みでないとうまく成長できないそうです。最初はIgMで、抗体として大量に産生されるときにIgGに変わるという流れなのだそうです。抗体のクラスがかわることをクラススイッチといいます。
「親和性成熟」と「クラススイッチ」を経て活性化B細胞はプラズマ細胞へと変化します。プラズマ細胞の細胞膜には抗体の発現はなく、細胞内で大量に抗体が作られ細胞外へ分泌されていきます。一部のプラズマ細胞は骨髄に移動し、大量のIgG抗体を作り、からだじゅうに放出しはじめます。病原体の侵入から一週間以上経った頃のことです。(血液検査で抗体の量を測ると感染の初期にはIgMが高く、発病から日数が経過していくにつれてIgGが高くなってくるという様子がみられます。)
抗体がどうやって働くのかということに以後続きます。
それから、今回もまだ触れていないことは
・抗原が蛋白質を含まない場合
・MHCクラスⅠとは
です。
参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博