副院長ブログ(免疫システムを知る㉘自然免疫の高度な働き、その1)
このブログで免疫システムを知る①自然免疫というタイトルで書いたのは2020年10月17日でした。
①自然免疫、とつけてプロローグ的な記事だったので、ここまで来て読み返すとタイトルと文章が合わない感じがしています。
その後、自然免疫から獲得免疫へと繋がっていく仕組みを勉強してきました。
病原体に特有の成分をTLR(トル受容体)などのパターン認識受容体が認識することにより、自然免疫は活性化し獲得免疫の始動へと繋がっていきます。
このことは21世紀直前に判明したことでした。
ところがTLRなどのパターン認識受容体が、病原体由来のものだけでなく、私たちの体の自己成分の一部も認識することが近年わかってきました。
その自己成分のことを内在性リガンドといいます。
内在性リガンドは自己細胞が大量に死んだときに出てくる成分などです。
TLRなどのパターン認識受容体は病原体に共通する特定の成分だけでなく、一部の自己成分も認識するということは、マクロファージや好中球などの食細胞が内在性リガンドを認識しても活性化して炎症を起こすことになります。
病原体が引き起こす炎症に対して、病原体が関わらないこの炎症を「自然炎症」といいます。
ああ、とうとう自然炎症のことを学べるところまでやってきました。
自然炎症が何のために起こるのかはっきりわかっていませんが、組織の修復に関わっているという考えが有力です。
ただ、最近、自然炎症が注目されているのは、自然炎症が様々な疾患の原因になっている可能性があるからです。
痛風、アルツハイマー型認知症、動脈硬化、糖尿病、などが自然炎症のために起きていると考えられています。
自然炎症が行きすぎると炎症性疾患が引き起こされ、自然免疫につづく獲得免疫に誤作動が起こると自己免疫疾患が引き起こされます。
しばらくそれぞれの仕組みについて学んでいきます。
参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博