副院長ブログ(免疫システムを知る㉙自然免疫の高度な働き、その2)
病原体がかかわらない自然炎症。
なんのために自然炎症がおこるのかについては組織の修復に関わっているという考え方が有力とのことです。
自然炎症がおこるとマクロファージや好中球が集まり、損傷部位が取り除かれます。
さらに修復のための専門細胞が集まり、組織の再建に取りかかり、組織は修復されます。
自然炎症の代表的な例はからだのなかで大量の細胞がネクローシスを起こして死ぬような場合で、外傷や火傷、薬物、放射線などが誘因となります。
からだで細胞が死ぬ様式にはネクローシスとアポトーシスがあります。
アポトーシスでは細胞膜に包まれたままDNAやRNAなどの内容物が分解されてしまうので食細胞のパターン認識受容体が感知することはありません。
ネクローシスでは細胞膜が破れて内容物が分解されずに飛び散ります。
大量の細胞がネクローシスを起こすと分解されない大量のDNAやRNAが食細胞のパターン認識受容体までたどり着きます。
RNAはヒトでもウイルスでもほとんど変わりがないのでパターン認識受容体に認識されます。
DNAはCpG配列にメチル化されていない領域(病原体チームのように見える部分)があり認識され、ミトコンドリアDNAはもともと微生物由来のためまったくメチル化されていないので当然CpG配列が認識されます。
そうして食細胞が活性化して炎症が起こります。
内在性リガンドによって食細胞が活性化するので樹状細胞も活性化します。
その場合、自己反応性のナイーブT細胞が存在しないので制御性T細胞が存在することによる獲得免疫が始動されることはありません。
(もし自己反応性のナイーブT細胞が存在していたら、、、)
TLRなどのパターン認識受容体は全身の細胞に分布しているため内在性リガンドで自然炎症を起こしうるのは食細胞だけでなく全身の細胞ということになります。
次回は自然炎症のために起きているということがわかってきた痛風について学習します。
食べ過ぎ飲み過ぎにご注意いただき、良い年末年始をお過ごし下さい。
参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博
スクエア最新図説生物 第一学習社