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副院長ブログ(免疫システムを知る㉝自然免疫の高度な働き、その6 TLRによる自然炎症)

[2023.04.30]

自然炎症の学習を続けています。

前回はNLP3が関わるインフラマソームの異常な活性化が原因となる自己炎症性疾患と総称されている病態についてでした。

自然炎症のなかにはTLRが関わるものもあるようです。

TLRについては免疫システムを知る⑤で勉強しました。

フランス・ストラスブール大学のジュール・ホフマン氏とアメリカ・テキサスのハワード・ヒューズ研究所のブルース・ボイトラー氏、大阪大学の審良静男氏、竹田潔氏のグループの研究によりTLRのことが明らかになりました。

ホフマン氏が1996年にショウジョウバエでカビの感染を検出するTollという分子をみつけ、Toll遺伝子を欠損させるとショウジョウバエがカビから自身を守ることができなくなることがわかり、LPS(リポ多糖)という細菌毒素を打っても死なないマウスをみつけ、そのマウスではTollと似た遺伝子に変異に変異があることを同定して、その遺伝子がつくるタンパク質にToll様レセプター(TLR)(トル受容体)という名前をつけました。

1997年にアメリカでヒトのTLRの存在が遺伝子上で複数発見され、1998年にはボイトラー氏らのTLR4がリポ多糖を認識するという論文が出て、

同じ頃に阪大の審良先生竹田先生のグループはTLRにいくつもの種類があることをみつけ、それぞれの遺伝子を欠損させたノックアウトマウスを作り出し、それぞれのTLRに結合する物質を探し、TLRが細菌やウイルスを含む様々な病原体の構成成分を認識していることがわかりました。

TLRは二つのパーツがセットになっている二量体という形で、TLRが何を認識するのかそのリガンド(受容体に結合する特定の物質)がつきとめられ、存在する場所やリガンドによって、TLR1/2、TLR2/6、TLR5、TLR2、TLR4、TLR9、TLR7、TLR3などが識別されています。

そのなかで、脳梗塞後に脳内に生じるタンパク質が組織に駆けつけたマクロファージのTLR2とTLR7を刺激して炎症を起こし脳梗塞を拡大してしまっているとう報告がされています。

そのほか、脳梗塞や心筋梗塞など血管が詰まって血液が流れない虚血状態にある組織や臓器に再び血液が流れ出したときに強い炎症が局所的にまたは全身で起こるという虚血再灌流障害という状態がありますが、それは虚血によって大量の細胞死が起こり、そのなかの成分が血管内皮のTLR2、TLR4、TLR9を刺激して炎症が起こるためと考えられています。

TLRなどのパターン認識受容体が内在性リガンドを認識しておこす自然炎症が炎症性疾患に関係している可能性が高まっています。

そのような状況の中にあって、炎症を抑えるマクロファージが存在するということについて次回学習します。

参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博

免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か 著者:宮坂雅之/定岡恵

 
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