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副院長ブログ(免疫システムを知る:番外編〜ウイルスとは)

[2021.01.31]

ウイルスとは、Virusドイツ語に近い読み方でビールス、英語読みではヴァイラスと発音されます。

風邪のビールス、なんて言われていましたね。

ウイルスは細菌、バイ菌とは違います。

細菌よりもずっとずっと小さく、遺伝情報(ゲノム:自己増殖する単位体にとって不可欠な1組の遺伝子群)だけを持っているもので生物といっていいのかどうか難しい存在です。でも微生物の教科書には載っています。

ウイルスは何かの細胞に入り込んで遺伝情報を書き換えて自分を増やすので、何か自分以外の生きた細胞というものがなければ存在することはできません。蛋白質でできたカプシドという殻のなかにゲノムが入っています。カプシド外側にエンベロープという膜で自分を覆っていて、そのエンベロープにはウイルス特有の蛋白質が埋め込まれています(コロナウイルスのエンベロープにはスパイク蛋白がある、というような形です)。そのようなウイルスの構造をビリオンといいます。

ヒトのDNAは塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)が並んでいる鎖が二本、らせん状に絡まったものですが、ウイルスのゲノムはDNAやRNAそれも二本鎖のものや一本鎖のものなどいろいろ知られています。

DNAがほどけてそれに相対するアミノ酸配列を作り出してそれを伝えるメッセンジャーRNA(mRNA)がつくられてそこから生物の構造を作り出すアミノ酸が作られ蛋白質が作られます。(DNA→RNA→蛋白質という流れをセントラルドグマといいいます。)

DNAが組み木のもとの型でRNAはその型にピッタリはまる相手の組み木みたいなイメージです。

相手の組み木から元の組み木にあたる複製を作ることができます。そのようにして情報を写し取る作業を転写といいます。

長いらせんの情報の必要な部分だけを写し取って必要な蛋白質が作り出される仕組みです(翻訳とよばれます)。

ウイルスは何らかの方法で動物の身体の中に入り込みその細胞である宿主細胞に吸着→進入→脱核(自分の核酸をむき出しにする)→初期転写で自分の核酸を宿主細胞の核酸に組み込んで初期mRNAを作り→翻訳により初期蛋白で材料を作り→核酸の複製→後期転写→後期翻訳でウイルスの構造蛋白作成→ビリオン(完全なウイルス粒子)の組み立て→ビリオンの放出を繰り返して増殖していきます。

このどこかの過程で宿主細胞の異変に気づいたとき免疫システムが働き、感染した細胞に対処することでウイルスの増殖は抑え込まれることになります。ウイルスを消し去る場合と完全に消し去れないけれどもその増殖を抑え込んで共存する場合があります。

そして、まだ身体に入ってきたことのないウイルスに対して免疫システムの準備を行っておくように誘導するのがウイルスに対する予防接種のワクチンです。

参考書:エッセンシャル微生物学 医歯薬出版

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