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院長ブログ

副院長ブログ(免疫システムを知る⑤病原体の認識)(2020.10.17更新)

食細胞が食べた相手が病原体なのか、処理すべき細胞の死骸や老廃物であるのかをどうやって認識するのでしょう。

20世紀の終わり(1990年代後半)に、食細胞は病原体を感知するセンサーを持っていて食べた相手が病原体かそうでないかを認識しているという研究が相次いで発表され自然免疫における大発見となりました。

そのセンサーはTLR(Toll-like receptor)という受容体、トル様受容体というもので、昆虫で見つかり、それの似たものがヒトやマウスでも発見されたもため昆虫の受容体の様な名称がついたのだそうです。

参考書のブルーバックス新しい免疫入門の著者の審良先生もその研究者のお一人です。凄いですね。

そして、もうひとつの参考書を用います。

今、高校生が使っているスクエア最新図説生物(第一学習社)です。

病原体をとらえた自然免疫細胞のもつ受容体のうち病原体認識にかかわるものは、

・パターン認識受容体(多くの病原体に幅広く共通する分子(パターン)を認識して、細胞を活性化する受容体)

・Fc受容体(抗体と結合した病原体や感染細胞を認識して、食作用などを活性化)

・貪食受容体(主に食細胞に発現して、病原体のパターンや病原体に結合した補体、死細胞に特有な分子を認識)

に大別されます。

トル様受容体TLRはパターン認識受容体の代表的なものです。

1つの細胞は数十種類のパターン認識受容体を持っていて、受容体で病原体が認識されると、マクロファージや好中球はサイトカインを合成したり殺菌力が増大し、(まだ触れていませんが)樹状細胞では抗原提示能力が増大します。

トル様受容体はTLR1/2、TLR2/6、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR9がブルーバックスでは紹介されていて、図説生物ではTLR3,TLR4、TLR5が載っています。

TLR3、TLR7、TLR9は食細胞の細胞表面ではなくエンドソーム(細胞内小胞)膜に存在して、リガンド(受容体に結合する特定の物質)は病原体のDNAやRNAで、エンドソームで病原体が分解された後に認識するようになっています。

細胞膜表面にあったら他の死んだ細胞のDNAやRNAを認識してしまうから、細胞の中にあって取り込んだ病原体を分解してそのなかのDNAやRNAを認識することが大事なんですね。

生命の核となるDNAを細胞が認識するということが発見され、しかもTLR9は自己のDNAと病原体のDNAを区別して認識していることがわかったのだそうです。

一本鎖RNAはTLR7が認識し、二本鎖RNAをTLR3が認識することも知られています。

(ウイルスは蛋白質でできたカプシドという殻の中にDNAまたは一本鎖か二本鎖のRNAを収納しています。ウイルスによってはカプシドの外側にエンベロープという膜を持つものがあります。エンベロープの中にはウイルスに特有の蛋白質が埋め込まれていますが、エンベロープは脂質でできた膜なのでエタノールや石けんで溶けてしまいます。だからエンベロープをもつウイルスにはアルコール消毒や石けんによる手洗いが有効というわけです。)

自分の大事なDNAを壊すことなく、病原体の遺伝子を認識して見分けて免疫の活性化をするのです。

TLRの他にウイルスのRNAを認識するRIG-I、真菌の細胞壁を構成する糖鎖を認識するCLR、そのほかNOD,cGASなどなども新しい免疫入門には紹介されています。

食細胞が病原体を認識して働いていることを知った次は、その仲間の樹状細胞について勉強します。

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