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副院長ブログ(免疫システムを知る㉔免疫記憶その4 記憶T細胞)

[2022.07.31]

獲得免疫が誘導された際に作られ、再び同じ病原体の侵入を受けたときに一次応答と比べてきわめて迅速かつパワフルな二次応答を引き起こす、免疫記憶の主役、記憶細胞(メモリー細胞)についての学習しています。

記憶細胞は「一度、抗原を経験して、そのあと抗原が存在しない状況下でも生き延びている細胞」と定義されます。

その定義で、記憶B細胞、記憶キラーT細胞、記憶ヘルパーT細胞が存在すると考えられています。

前回までに学習しなかった部分について学習します。

ヘルパーT細胞とキラーT細胞には、エフェクター記憶T細胞とセントラル記憶T細胞の2つがあると考えられています。

活性化T細胞はエフェクター細胞(はたらく細胞)となり大部分が末梢組織に出ていき、一部がリンパ節に残ります。

このときに同時に、エフェクター記憶T細胞とセントラル記憶T細胞の2種類の記憶細胞が作られます。

その2つは細胞表面に出ている分子により分類され、末梢組織にはエフェクター記憶T細胞が多く、リンパ節ではセントラル記憶T細胞が多いそうです。

エフェクター記憶T細胞は末梢組織の肺、気管、腸管などの粘膜器官に多く存在します。

セントラル記憶T細胞はリンパ節から骨髄に移動することが報告されているそうです。

その組織で発現しているサイトカインに関連して記憶T細胞の分布の差が生じているようです。

同じ抗原が次の機会に侵入したときに、エフェクター記憶T細胞は素早くエフェクター機能を発揮できますが、増殖能力が乏しく寿命が短い一方で、セントラル記憶T細胞はすぐにエフェクター機能を発揮できるわけではないけれども、増殖能力が高く、少し時間がかかりますが多くのエフェクター細胞を生み出します。

そこで記憶キラーT細胞、記憶ヘルパーT細胞としてそれぞれ働くというわけですね。

ただし、これはそのようであると考えられている、という段階だそうです。

まだまだわかっていないことがたくさんあります。

前回、親和性成熟を経て高親和性IgG型プラズマ細胞ができるときに濾胞樹状細胞ができて抗原のショウウインドウの役目をしていてB細胞の免疫記憶に重要であると書きましたが、

濾胞樹状細胞の表面のある分子を壊したマウスではB細胞の免疫記憶が生じないばかりでなく、初回の感染より2回目の感染の方が抗体の量が少なくなってしまうそうです。(困りますね)

壊した分子はCR2といって自然免疫に属する防御物質である補体の受容体です。

「補体」が免疫記憶にどうかかわっているかまったくわかっていないようですがとにかく濾胞樹状細胞の表面のこのCR2という分子を壊すと記憶細胞が生じない、

ということは、(T細胞、B細胞が中心の)獲得免疫にかぎらず、自然免疫も免疫記憶に関わっている可能性が示されていると考えられます。

なお、獲得免疫の反応の対象は病原体だけでなくがん細胞や移植された組織、アレルゲン、そして場合によっては自分の成分だったりして、からだにとって都合の良い免疫応答だけでなく、疾患の原因になることがあり、反応を抑制して対処する必要がでてくることもあります。

なんでもほどほどがよいです。

参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博

    スクエア最新図説生物 第一学習社

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