メニュー

副院長ブログ(免疫システムを知る㉕腸管免疫〜小腸での様子その1)

[2022.08.31]

⑱で少し触れましたが、参考書を読み進めてきて、ようやく腸管免疫の章までたどり着きました。

腸管の免疫システムについて小腸を例に学習します。

小腸管腔の内側には絨毛(じゅうもう)という突起のような細かい毛のようなものがびっしり生えています。

絨毛の最も表層には一層の粘膜上皮細胞が並んでいてその表面に微絨毛(びじゅうもう)がすき間なく生えています。

絨毛には毛細血管とリンパ管が分布していて、毛細血管からはアミノ酸やブドウ糖が、リンパ管からは脂質が吸収されます。

粘膜上皮細胞のあいだに多くのT細胞や樹状細胞が挟まれる形で分布しています。

粘膜上皮細胞のならびのなかには下部にポケットを持つM細胞という特殊な細胞がときおりみられ、 M細胞があるあたりは絨毛がとぎれ、台地状になっています。

(一本一本のなかに血管やリンパ管が流れている柔らかい「突起」がはえている地面の突起の間のところどころに隙間が台地状にあり、その突起や台地の表面は薄毛のある粘膜細胞という細胞で覆われているというイメージ)

その台地の下にパイエル板というリンパ組織があります。

パイエル板には樹状細胞、T細胞、B細胞などの免疫細胞がいて、樹状細胞などはM細胞のポケット部にも入り込んでいます。

パイエル板は1677年にスイスのパイエルさんが発見しましたが免疫に関係することがわかったは1970年代だそうです。

小腸のリンパ組織にはパイエル板の他に点在する孤立リンパ小節や腸間膜リンパ節があります。

絨毛の最も表層に並ぶ粘膜上皮細胞の下の粘膜固有層には免疫応答の結果として配置されたプラズマ細胞(抗体産生細胞)が並んでいて、粘膜上皮細胞を通して腸管腔内に向けて抗体を放出しています。

粘膜固有層にはT細胞、樹状細胞、マクロファージ、マスト細胞なども分布しています。

腸管の粘膜固有層に存在する免疫細胞の数は、からだのどの部位に比べても圧倒的に多いといわれています。

M細胞は特殊な受容体を腸管腔内に出していて、食物といっしょに流れてきた細菌やウイルスをくっつけてポケットに取り込みます。

例えば大腸菌やサルモネラ菌に結合するGP2受容体という存在が知られています。

ポケットでは樹状細胞が待ち構えていて、取り込まれた細菌やウイルスを受け渡され、免疫応答がはじまります。

抗原となるウイルスを受け渡された樹状細胞はパイエル板のナイーブヘルパーT細胞に抗原提示を行い、抗原特異的に活性化ヘルパーT細胞が誕生します。

このときパイエル板のナイーブB細胞も独自にB細胞抗原認識受容体にくっついた抗原を食べて少し活性化していて、活性化ヘルパーT細胞との相互作用により完全に活性化し、クラススイッチ、親和性成熟を経て、プラズマ細胞の前駆細胞へと分化します。

パイエル板の免疫応答では活性化B細胞の抗体がIgAにクラススイッチすることが特徴的です。

腸内細菌が関係することも考えられていますが、IgAにクラススイッチするしくみはわかっていないようです。

プラズマ細胞の前駆細胞はパイエル板からリンパ管経由で出て行き血流に乗り、再び腸に戻ってきてプラズマ細胞となり、粘膜固有層に並んでIgAを腸管内に向けて放出します。

パイエル板からでたプラズマ細胞の前駆細胞は腸管のほかに鼻やのど、肺の気管支、生殖器などからだじゅうの粘膜にたどり着いてプラズマ細胞となります。

腸管でつかんだ病原体はからだじゅうの粘膜から侵入する可能性があるのでまんべんなく配置して水際で阻止するためと考えられています。

腸管免疫が粘膜免疫と呼ばれる由縁です。

粘膜に存在するリンパ組織を粘膜関連リンパ組織といい、その組織で粘膜から侵入する病原体の情報が免疫細胞に伝達され、病原体の排除が誘導されます。

粘膜に点在するものと、扁桃やパイエル板などのように塊として存在するものがあります。

ちょっと(小腸みたいに)長くなってしまいました、次回に続きます。

参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博

    スクエア最新図説生物 第一学習社

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME