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副院長ブログ(免疫システムを知る㉖腸管免疫〜小腸での様子その2)

[2022.09.30]

小腸粘膜での腸管免疫の様子の学習の続きです。

腸管粘膜粘液中の免疫グロブリンは血清中に比べてIgAがとても多いということが知られています。

(血清中の免疫グロブリンの75−80%はIgGですが、空腸液では85−90%、初乳では95%がIgA)(小腸は空腸と回腸からなります)

プラズマ細胞が腸管粘膜などの粘膜の上皮細胞の直下の粘膜固有層にいて、IgAを放出します。

腸管のプラズマ細胞が放出するIgAは二量体になっていて、粘膜上皮細胞はそのつなぎ目を引っ掛けて細胞内に取り込み、引っ掛けた道具をくっつけて腸管内に放出します。

(粘膜粘液中のIgA大部分がS-IgAで、2分子のIgAがJ鎖という糖蛋白で結びつけられ、そこに分泌因子SCという上皮細胞で作られた糖蛋白が結合した形です。)

IgAは抗原特異的に病原体(細菌やウイルスなど)にくっつき、中和作用により病原体の機能を停止させ、病原体共々体外に排出されます。

腸の表面には厚い粘液層があり、その粘液層にIgAが溶け込む感じになります。

粘液上皮層から侵入しようとする病原体は粘液層を通るので、ここでIgAに中和されて排除されます。

IgAは腸管や肺の内腔に輸送され、感染細菌や感染ウイルスから身体を守る働きをしています。

腸管から放出される抗体がIgAであることで、IgAがオプソニン化作用がないので、食細胞の食欲をむやみに増すことがなく、IgAが粘膜固有層や粘膜上皮層で病原体を中和しているため、食細胞がどんどん寄ってこないので、無用な炎症をおこさないで済むことになります。

腸管にはIgGも産生されていて、IgAのバリアをくぐり抜けて粘膜固有層にまで侵入してきた病原体に対処するものであると考えられます。

プラズマ細胞が出来上がるパイエル板の他に、ヘルパーT細胞に依存しないIgA産生プラズマ細胞の誘導が孤立リンパ小節などで起こっていますが、親和性成熟が起こらないので抗体産生は速いけれども、親和性は低いと考えられます。

ささっと作られて早く出てくるけど、効果は弱いというわけです。

孤立リンパ小節でIgMからIgAにクラススイッチする仕組みはよくわかっていないようですがパイエル板とは異なる形での腸内細菌の関与があるようです。

では口から食べた食べ物が腸管粘膜で病原体として認識されないのはなぜか、次回は経口免疫寛容について学習します。

参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博

    スクエア最新図説生物 第一学習社

本の他に、佐賀大学医学部病因病態科学講座生体防御学分野のホームページ

             
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