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副院長ブログ(1990年代から現れた3種類の糖尿病薬)

[2023.04.08]

膵臓のβ細胞を刺激し続けてインスリン分泌を促すスルホニルウレア剤(SU剤)のことはこのブログではまだ触れていませんが、今回はSU剤とビグアナイド(前回書きましたメトホルミンなど)だけしか内服薬がなかったところに1990年代に発売された3種類の糖尿病薬について書きます。

①αグルコシダーゼ阻害薬

②グリニド(速効型インスリン分泌促進薬)

③チアゾリジン誘導体

の3種類です。

①αグルコシダーゼ阻害薬は1993年にグルコバイ、1994年にベイスン(ボグリボース)が発売され、糖尿病治療の世界に新風が巻き起こりました。

もともと、やせ薬として開発されていた経緯があったと聞いているのですが、

食事を始める直前に内服して胃腸からのブドウ糖の吸収を遅らせてゆっくり吸収させることで血糖が急激に上がりにくくなるという仕組みのお薬です。

ゆっくり血糖が上がればインスリンが急激にたくさん分泌されなくてすむので膵β細胞に負担をかけず太りにくいという効果があります。

ただし、食物が吸収されずに不消化なまま腸管を進むためガス(おなら)が増えるという副作用があります。

ゆっくりよく噛んで食事をするとその副作用は軽減するといわれています。

それと、肝機能の数値が上がりやすいことと飲酒は注意が必要です。

②グリニドは①と同じタイミングで内服する薬で、食事をしているときに素早いインスリン分泌を促して食後血糖を上がらないようにしようというものです。

グリニドは1999年にファスティックとスターシスが発売され、2000年代に入ってグルファスト2010年代にシュアポストが出て来ました。

食事のときに刺激をするだけでそれ以外はβ細胞を刺激しないので低血糖になることが少なく膵β細胞の保護にもなると考えられます。

血糖が下がる以外に副作用が少ない印象があり、腎機能が気になるかたには量を少なくして処方することができます。

①と②の薬が1つになったグルベス配合錠という便利な製剤もあります。

③チアゾリジン誘導体は一日一回の内服で脂肪細胞を小さい脂肪細胞に分化させ脂肪細胞が分泌するTNF-α(炎症性サイトカインの一種)の産生を抑えてインスリン抵抗性を改善する薬で、他の働きで動脈硬化を抑制するとも考えられています。

組織でインスリンの働きが良くなることで血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれ血糖値が改善します。

1997年にある薬が発売されましたが重篤な副作用があり販売が中止となり、1999年に発売されたアクトス(ピオグリタゾン)が比較的安全であり処方され続けています。

インスリンは分泌されているのだけれどもやや肥満ぎみでインスリン抵抗性があり血糖が高い患者さんに効果があります。

しかしインスリンが働いて血糖が細胞に取り込まれると太りやすくなり体重が増えやすいという結果がありますが食事量で調整可能であり、脂肪細胞の質が変わるので炎症状態が改善するので長期的な血管合併症予防効果が期待できます。

女性に多いのですが脚が浮腫むという副作用があります。

そのほかに血尿が始まっていないか調べるため時々尿検査が必要です。

それでもこの薬が本当に良く効く患者さんがあり、この薬でないと血糖が良くならない印象の患者さんもあります。

その後にインクレチン関連薬やSGLT2阻害剤、イメグリミンなどが世にでてきましたが、今回ご紹介した3種類は患者さんが適切に飲んでくださると本当に良い効果のある薬だと思っています。

1990年代に医師となった私にとって一緒に働いてきた同級生のような薬たちです。

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