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副院長ブログ(免疫システムを知る⑥獲得免疫-a.樹状細胞からナイーブヘルパーT細胞への連携)

[2020.11.25]

これまで、自然免疫というシステムで食細胞が何でも食べて、進入した病原体までも食べてしまう仕組みについて知り、前回はその病原体を感知するトル様受容体などによる大まかに相手チームを掴むパターン認識について勉強しました。

感知した後どうなるのか。病原体をピンポイントで強力にたたく(抗原特異的な)「獲得免疫」という仕組みが始まります。

取り込んだ病原体がどんな種類の病原体なのかをパターン認識して警報物質サイトカインが放出されますが、そのうちのケモカインは病原体を食べて活性化した食細胞の一種である樹状細胞をリンパ節へと誘導します。

ケモカインにより呼び寄せられた樹状細胞は活性化すると表面にケモカインと反応する新たな受容体ができて、さらにケモカインに強く反応します。

抗原となる病原体を取り込んだ樹状細胞は細胞内の酵素の力で病原体のからだを構成する蛋白質をペプチドと呼ばれる断片に分解します。

(抗原とは獲得免疫のターゲットで、細菌・ウイルス・真菌、細菌の出す毒素や細菌が死んで漏れ出す毒素なども抗原です。その抗原の刺激を受けて初めて獲得される免疫ということで獲得免疫と呼ばれます。)

一部のペプチドはMHCクラスⅡという分子と結合して樹状細胞の表面に提示されます。

お皿のようなMHCクラスⅡ分子にペプチドが乗ったものが樹状細胞の表面にたくさん出ているなかに病原体由来のペプチドだけでなく自己細胞由来のペプチドも提示されてにょきにょきと多数のMHCクラスⅡ+ペプチドの枝が生えた様子になります。

活性化した樹状細胞はこのような形になっってリンパ節の中でこんな病原体を食べたという抗原提示を行い、ナイーブT細胞に知らせます。

(樹状細胞は抗原提示能力が著しく高いので免疫司令塔となります。)

ナイーブT細胞はこれまで抗原に出会ったことのないT細胞で、MHCクラスⅡ+抗原ペプチドによる抗原提示に対応するものはナイーブヘルパーT細胞というものです。

T細胞は骨髄で未熟型が作られ、胸腺で成熟してナイーブT細胞となって全身のリンパ節を巡回しています。

(T細胞、Tリンパ球には大きく分けて2種類あり、表面にCD4という分子を出しているものがヘルパーT細胞、CD8という分子を出しているものはキラーT細胞といいます。)

活性化した樹状細胞はリンパ節で手当たり次第にナイーブヘルパーT細胞とくっつき合って提示されているMHCクラスⅡ+抗原ペプチドにぴったりくっつくT細胞抗原認識受容体を探します。

T細胞抗原認識受容体の形状は1000億以上もあって、ピッタリくっつくものが見つかる可能性は高く、MHCクラスⅡ+自己細胞由来ペプチドにくっつくものはほとんどいないため 抗原を提示している樹状細胞とくっつくことのできるナイーブヘルパーT細胞が見つかってくっつきます。

くっつくだけでなく樹状細胞のCD80/86という補助刺激分子とナイーブT細胞のCD28という補助刺激分子もしっかりくっつきます。

くっついたT細胞は活性化した樹状細胞が放出するサイトカインを浴びます。

それでナイーブヘルパーT細胞が「抗原特異的に」活性化されます。

活性化したヘルパーT細胞は増殖をはじめます。

増殖したヘルパーT細胞は一部はリンパ節に残り、多くはリンパ節を出て末梢組織に向かいます。

活性化したヘルパーT細胞の一部は記憶ヘルパーT細胞になり、「(もうその病気に二度とかからない)二度なし」の要素となります。

情報を受け渡した活性化樹状細胞はヘルパー細胞に情報を伝達できたころに消えてなくなるようにタイマーがセットされていて消失し、活性化T細胞の増殖しすぎを防いでいると考えられています。ほんとに凄い。(つづく)

参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博

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