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副院長ブログ(免疫システムを知る⑯免疫反応の制御)

[2021.11.30]

免疫システムが働いて病原体が排除されたら、その免疫反応を終了させたり、病原体ではない自己細胞は攻撃しないようにコントロールする仕組みが大切です。

自然免疫の樹状細胞が食べたものが病原体であると確認した場合には抗原提示をして獲得免疫を始動しますが、活性化した樹状細胞が抗原提示をしているお皿には自己細胞由来のペプチドも提示されていて、それにくっつくナイーブT細胞(ヘルパーとキラー)が活性化してしまう、自己反応性ナイーブT細胞というものがあります。

病原体がいないときの樹状細胞は活性化していないときには自己細胞由来のペプチドだけが提示されていてそれに自己反応性ナイーブT細胞がくっつくとアナジーという無反応や不応答の状態になります。

活性化していない樹状細胞は補助刺激分子を出しておらずサイトカインも出していないので刺激が無いためナイーブT細胞はアナジーとなります。

病原体がないときに自己反応性のナイーブT細胞はコツコツ不応答化されていて、いざというときも不応答化されることになるようです。

それでも完全に不応答化できないので自己反応性ナイーブT細胞に競合的に働いて反応を制御する制御性T細胞という存在が発見されています。

活性化した樹状細胞にペタペタと制御性T細胞が貼り付いて自己反応性ナイーブT細胞が樹状細胞に結合できないようにしてしまうのだそうです。

制御性T細胞は自己抗原に結合するだけでなく、制御性T細胞表面のCTLA4という分子が活性化した樹状細胞が出している補助刺激分子CD80/86に強く競合して樹状細胞に対して抑制性シグナルを送り、樹状細胞表面での補助刺激分子の発現が減り、自己反応性でないナイーブT細胞の活性化も抑えられ、また、制御性T細胞はインターロイキン2と強く結合する受容体を発現していて活性化T細胞の誘導を競合的に奪うなどして、免疫応答を抑制的にコントロールする働きも持っています。

樹状細胞には自己反応性の制御性T細胞が絶えず貼り付いて、樹状細胞の活性化と抑制のバランスをコントロールしています。

いざというとき、すなわち、樹状細胞が大繁殖した病原体を食べて活性化したときには抗原ペプチドがたくさん提示されて表面の自己ペプチドが減り貼り付いている制御性T細胞が外れて、樹状細胞がどんどん活性化します。

病原体を排除しているとき病原体に対する免疫反応は活性化されて自己反応性のナイーブT細胞の暴走は抑えられ、病原体が排除された後には免疫応答の過剰な活性化をバランス良く抑える仕組みが働いているというわけです。

参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博

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