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副院長ブログ(免疫システムを知る⑰三種類の活性化ヘルパーT細胞の免疫反応とバランス)

[2021.12.31]

自然免疫から獲得免疫へと反応が進むときに、活性化ヘルパーT細胞には三種類あることが最近わかってきました。

⑴インターロイキン12というサイトカインを浴びて分化誘導される活性化1型ヘルパーT細胞(Th1)は、

①末梢組織に行って抗原特異的にマクロファージをさらに活性化し、

②抗原特異的にB細胞を活性化してIgGを放出させ、

③ナイーブキラーT細胞が活性化するのを助け、

食細胞や活性化キラーT細胞、NK細胞が中心になり病原体の排除をする細胞性免疫を起こします。(これまで主に学習してきた内容です)

⑵インターロイキン4を浴びて分化した活性化2型ヘルパーT細胞(Th2)は、

①抗原特異的にB細胞を活性化してIgGを放出させ、

②抗原特異的にB細胞を活性化してIgEを放出させ、

③好酸球を活性化させ、(寄生虫を排除する役割)

抗体による液性免疫反応を起こします。

なお、IgEはEクラスの抗体でプラズマ細胞から放出されたIgMからクラススイッチしてできたものであり、そのIgEの根元が免疫細胞の一種のマスト細胞の表面に結合してマスト細胞を活性化してその細胞のなかにためられたヒスタミンなどの物質を一気に放出します。平滑筋を動かしたり血管透過性を高めて粘液を増やして寄生虫排出するためと考えられています。このしくみの誤作動が花粉症といわれています。

⑶21世紀に見つかった活性化17型ヘルパー細胞(Th17)は、インターロイキン6とTGFβ(トランスフォーミング増殖因子β)を浴びて分化して

①末梢組織に行ってサイトカインを放出しケモカインの発現を誘導して好中球を集積させ、

②腸管の上皮細胞に働いて細菌に対する防御物質である抗菌ペプチドを腸管内に放出させ、

③なかにはインターフェロンγを発現してナイーブキラーT細胞を活性化させて、

細胞外細菌や真菌に対して免疫応答を起こします。

ウイルス感染のときに感染細胞を排除する活性化キラーT細胞が出動するときにはTh1で始まる必要があるけれども、細胞から飛び出したウイルスを中和する抗体を放出するにはTh2の免疫反応が必要で、Th1、Th2、Th17は互いを牽制し合うサイトカインを出してバランスをとって細胞性免疫と液性免疫の調節をしているらしいです。(これがくずれるとアレルギーの原因になります)

活性化ヘルパーT細胞が3種類あって活性化キラーT細胞(CTL)があるので活性化T細胞は4種類あることになりますが、活性化T細胞と同じサイトカインを出す自然免疫細胞が見つかっていて自然リンパ球と呼ばれサイトカインの種類により3つのグループにわけられていて、非特異的なアレルギーや免疫疾患の原因の一部になっているのではないかと考えられています。

そして免疫反応を起こす細胞を制御する制御性T細胞(Treg)が前回学習したような活動をしているということになります。

参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博

    病気がみえる⑥免疫・膠原病・感染症 (メディックメディア)

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