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副院長ブログ(「インシュリン物語」を読む④四 インスリンを理解するために その2)

[2023.07.14]

インシュリン物語第四章からの抜粋を続けます。

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インシュリンはどこにあって、どんなものか。

膵臓内でのインシュリンの源泉と貯蔵場所、つまりランゲルハンス島は、小さい膵臓内に埋没しているので肉眼で見るのは難しい。

正常の人間の膵臓は大ざっぱにいって15㎝から20㎝の長さで、幅は1㎝から5㎝までさまざまである。

その形の特徴から頭部、体部(または頚部)と尾部とに区分して呼ばれている。

膵臓は胃の背側にあって、膵頭部は胃と小腸の間にある十二指腸に隣り合っている。

尾部は脾臓の近くまで伸びている。

ランゲルハンス島は膵臓全体にちらばっているが、主に尾部に密集している。

膵臓全体のものをひっくるめて、ランゲルハンス島は膵組織の約1パーセントであり、消化液を作る別の細胞に取り巻かれて島状に散在している。

ここは他の細胞よりも血管が豊富で、インディアン・インキを膵臓の血管に入れるとよくわかる。

ランゲルハンス島には、小動脈と静脈とを結ぶ小さい球状ないし房状の毛細血管が見える。

正常の膵臓をごく薄く切って顕微鏡標本を作ると、1つのランゲルハンス島内部の細胞を見ることができる。

注意深く検査してみると、1つ以上の細胞があることがわかり、はっきりわかる2つの型は、1つは島の中央部にある細胞で、その核のまわりに暗色の顆粒物質がある細胞と、この細胞のまわりにオレンジの皮のように並んでいる暗色の顆粒のない細胞とである。

毛細血管の断面は白斑のように島内に散在している

周辺の明るい細胞はアルファ(α)細胞で、グルカゴンという物質を産生していると信じられている。

中央部にある暗色の細胞はベータ(β)細胞と呼ばれていて、この特殊な染色で暗色に染まる顆粒物質は膵内に貯えられているインシュリンの量と平行することがわかっている。

ベータ細胞によって放出されたインシュリンは顕微鏡的な短い距離を旅して循環血中に入る。

電子顕微鏡で見ると、インシュリン産生ベータ細胞の中には核をとりまいている細胞質という部分の中に丸いものや不規則な形をした暗色の構造をしたものがあり、それがインシュリンを含んだベータ顆粒である。

ベータ細胞と、その細胞質内の顆粒について、また、インシュリンのような蛋白分子がどのようにしてベータ顆粒から出て、細胞膜を経て血液の中に出て行けるのかについて、多くの心奪われるような問題が未解決のまま残っている(1960年代当時)。

糖尿病、ひろくは代謝一般に関する知識のためにもこの解答が必要である。

化学的に言って、インシュリンは何であるのか?

(次回に続きます。)

参考書:インシュリン物語    G.レンシャル・G.ヘテニー・W.フィーズビー著 二宮陸雄訳 岩波書店 1965年発行 1978年第12刷版

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