副院長ブログ(免疫システムを知る⑮獲得免疫-j.キラーT細胞:後編)
ナイーブキラーT細胞が活性化キラーT細胞となり、増殖して、感染した細胞が出している警報物質に誘導されて感染部位にたどり着きます。
感染細胞のMHCクラスⅠ分子の上にウイルスや病原体由来の何種類かのペプチドが乗っていて、たどり着いた活性化キラーT細胞は樹状細胞で提示されて結合したことのあるものと同じペプチドに結合します。
それから活性化キラーT細胞は2つの方法の両方を用いて感染細胞を破壊します。
1つは特殊なタンパク質を放出して感染細胞に穴をあけ、その穴から酵素を投入して感染細胞にアポトーシス(細胞の自殺)を誘導します。
もう1つはたいていの細胞がだしているアポトーシスのスイッチをキラーT細胞が直接押してアポトーシスを誘導します。
感染細胞がぱーんと弾けて壊れたりすると内容物が周囲にばらまかれるので、そうならずにアポトーシスを起こすことによって食細胞に処理をさせることが重要です。
これで感染細胞を食細胞が食べてしまうことによってウイルスや細胞内寄生細菌を排除するにいたりました。
抗原を提示するMHCクラスⅠ分子とMHCクラスⅡ分子、2つのお皿の違いはそのお皿に乗るペプチドのアミノ酸の数で、MHCクラスⅠ分子に乗るペプチドはアミノ酸の数が少なく短いペプチドなのだそうです。
MHCクラスⅠ分子の上には病原体のペプチドが提示されてしまうので、病原体がそれを隠そうとしてMHCクラスⅠ分子の上にペプチドがでていない場合があります。そのときには病原体の感染をTLRなどが感知したり病原体タンパク質合成のために細胞にストレスがかかるなどして細胞の表面にCD80/86やNKG2Dリガンドなどがでている状態であれば「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」がその細胞を破壊する仕組みになっています。驚きです。
参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博