副院長ブログ(免疫システムを知る㉑免疫記憶その1 記憶細胞という存在)
抗原の初回の侵入では7日目ごろから抗体が増え始め、15日目ごろでピークとなります。(一次応答)
二回目の侵入になると7日目で初回のピークを大きく越えて10日目で初回の100倍近くに達します。(二次応答)
獲得免疫が誘導された際に作られた記憶細胞は、再び同じ病原体の侵入を受けると、一次応答と比べてきわめて迅速かつパワフルな二次応答を引き起こします。
このような仕組みは免疫記憶と呼ばれ、獲得免疫の特徴の1つです。
近頃、私たちが新しいウイルスに対しての新しいワクチンを最初に打つことで一次応答を体内で誘導して、複数回の予防接種により二次応答を強めているという訳です。
これまで学習したように、
抗原刺激により、ナイーブB細胞、ナイーブキラーT細胞、ナイーブヘルパーT細胞が抗原特異的に活性化され、増殖します。
増殖した細胞はそれぞれの役割を果たすために一生懸命働きます。
その働く状態の細胞を各細胞のエフェクター細胞と呼びます。
増殖した細胞の一部は記憶細胞になります。
抗原が排除されると、エフェクター細胞はアポトーシスによって死んでしまいますが、記憶細胞はそのまま生き続けて、次の抗原侵入に備えます。
記憶細胞は「一度、抗原を経験して、そのあと抗原が存在しない状況下でも生き延びている細胞」と定義されます。
その定義で、記憶B細胞、記憶キラーT細胞、記憶ヘルパーT細胞が存在すると考えられています。
記憶細胞は数が少なく、実験が困難であるようですが、記憶T細胞の長期間の存在は活性化を引き起こした抗原が存在しなくてもサイトカインによって維持されていることが証明されているそうです。
記憶細胞があるらしいということは判っているけれども、どうやってそのようなことが起こるのかは解明し切れていないらしいのです。
それぞれの記憶細胞について知られている範囲のことを学習していきます。(つづく)
参考書:新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで 著者:審良静男/黒崎知博
スクエア最新図説生物 第一学習社