副院長ブログ(健診の心電図①洞性不整脈)
健康診断の検査結果で、心電図について「正常範囲」以外の所見があると、病的な範囲でない場合になかなか詳しく御説明する時間もないので、毎年の検査で同じ結果が毎回書いてあっても、どういうことなのかご存知ないかたが多いように思います。
いろんな所見があるのですが健康診断でわりとよく出会う所見について書いてみます。
①洞性不整脈、とは。
先ず、心臓は右心房・右心室・左心房・左心室と四つの部屋があります。
ひとの右手側の部屋が右、左手側の部屋が左と呼びます。
心房は血液が流れ込む部屋、心室は血液が拍出される部屋です。
右心房には全身を回ってきた静脈血が上大静脈・下大静脈を通って流れ込みます。
右心房から三尖弁という仕切りを経て血液は右心室に流れ込み、肺動脈弁を経て肺動脈を通って肺へと流れていきます。
肺の肺胞で静脈血は二酸化炭素を受け渡して酸素を受け取り動脈血となります。
それが肺静脈に集まり左心房に流れ込みます。
左心房に流れ込んだ血液は僧帽弁という仕切りを経て左心室に流れ込み、大動脈弁を経て大動脈から全身に送り出されます。
(ご覧の通り、心臓に流れ込む血管を静脈、心臓から出ていく血管を動脈と呼びます。心臓では肺動脈には静脈血、肺静脈には動脈血が流れています。)
位置関係がわかったところで今度は心臓の動きについてです。
心臓のポンプの働きは心臓の筋肉の運動によって担われています。
心臓の筋肉の運動は電気信号が伝わることで収縮と拡張を繰り返します。
心拍(脈拍)は一分間に60回から100回未満ぐらいが正常範囲ですが、この自律的な動きは電気信号を発する場所の細胞によって決まります。
その電気信号を発する細胞は右心房の洞結節(洞房結節)という場所に存在しています。
洞結節からの電気信号は右心房内を通って心房をわずかに収縮させ、房室結節という場所に集まり右心室・左心室に電気が伝わり心室が収縮します。
その洞結節のペースメーカーのリズムの速さ、間隔を洞調律といいます。
正常の洞調律であることは正常な洞結節から正常範囲の脈拍の範囲で規則的に電気信号が発せられていることを示しています。
そこで洞性不整脈という言葉が所見に挙がっている場合のことを説明します。(ここまで長かったですね)
洞結節の電気の発信は細胞の一定の収縮により行われますが、ある程度は自律神経(交感神経と副交感神経)によって制御されています。
交感神経が活発なときは脈拍が早くなり、副交感神経が安静や食事、睡眠などで優位なときは心拍がゆっくりになります。
この自律神経の制御が顕著なときに心拍の間隔が呼吸とともに長くなったり短くなったりが心電図でとても目立つことがあります。
とくに20歳前後ぐらいまでの若いかたに多い所見です。
むしろ自律神経が正常に働いている証拠でもあります。
微妙な心拍の間隔の変化はどなたでもあるのですがそれが特に目立つ場合に洞性不整脈という所見がつきます。
困った病気ではありません、ご安心ください。
(なお、年齢が進んだり、疾患などで自律神経の働きが弱まっている場合には脈拍が呼吸性に変化しない一定リズムに近づいていきます。)
追記:洞結節から不規則な電気信号が発せられたり、速すぎたり、遅すぎたりなどの状態については洞機能不全という病名が別に在ります。
