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副院長ブログ(「インシュリン物語」を読む㊴一 どれだけのインシュリンを? その3)

[2026.07.14]

インシュリン物語を今月も少しずつ読みます。

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これまで述べてきたインシュリン定量の問題はインシュリンを大量に製造するときに起こる問題であった。

それでは正常人の血中に存在しているインシュリンの定量はどうなのであろうか?

この際のインシュリン濃度は一方ではランゲルハンス島から血中に分泌される速度と、他方では体組織により血中から取り上げられる速度で決まる。

その測定はインシュリンの活性に関する重要な結論に導くことであろう。

血中のインシュリン濃度は極めて低いので、膵臓内の濃度を測るよりははるかに難しい。

これまで血漿中のインシュリン測定のために用いられた方法の多くは、インシュリンを化学的に抽出しようとはせずに、インシュリンにより影響されることがわかっている血漿中の物質の変化を測定する方法であった。

血中にはインシュリンの作用に拮抗するホルモンが存在し、血中インシュリン定量のために用いられてきた動物方法の目標とするところは、インシュリンに反対して血糖を上げるようなホルモン腺、すなわち副腎や下垂体を、除去したり不活性化することにあった。

動物の下垂体と副腎をとり除くとインシュリンに対する感受性がはるかに高まる。

20年前(当時の)に、E・ゲルホルン、J・フェルドマンおよびA・アレン(シカゴ)はこういうふうなラットを作ってインシュリンを測定した。

後にJ・ボルンスタイン(オーストラリア)はそのような動物のインシュリン生産細胞をも取り除いて、注射したインシュリンの定量が動物自身の分泌するインシュリンによって複雑にならないように試みた。

この非常に敏感な動物に、人を含めた正常動物の血漿を注射するとそのインシュリン様活性を測ることができた。

血漿やその他の溶液中の微量のインシュリン活性を検出するもう一つの方法は、生きたままの筋肉や脂肪細胞を体外にとり出し、容器中の特殊な栄養液中に入れる方法である。

血漿中のインシュリン様活性はそれらの細胞が栄養液中のブドー糖をどれだけ取り上げるか、ブドー糖を消費してどれだけの炭酸ガスを作るかによって測定される。

その際放射性炭素を持っているグルコースを用いて、その動きを放射能で追跡すると非常に敏感にインシュリンを測れるようになる。

J・グローエンらのオランダ研究陣が初めてこの方法で糖尿病患者の血漿インシュリン濃度をラットの横隔膜法で測った。

脂肪組織の薄膜を用いる極めて敏感な定量方法がアメリカのルノールド等により発展させられている。

これらの血中インシュリン様活性測定法には多くの難点がある。

その作用に反対する抗インシュリン物質もあるし、インシュリンと結合してその作用を妨害する物質もある。

さらにインシュリンに似た性質があるためにインシュリンと間違えられる物質もある。

これらの落とし穴のために、研究者の中にはインシュリンに作用することが明らかにされている特異的な化学過程を測定法に導入して、本当にインシュリンを測っていることを確かにしようとしている。

最近オーストラリアの研究者たちは膵臓内のインシュリンを抽出する方法を応用して血漿インシュリンを抽出しているし、アメリカのロザリン・ヤロウとS・バーソンはモロニーの開拓したインシュリン免疫反応を用い、モルモットでインシュリン抗体を作って、これを測定法に導入している。

これらの改良法を用いてオーストラリアとアメリカの研究陣は正常人の血漿はもちろん、高年の糖尿病者の血漿のインシュリンを測定することに成功している。

これらの新しく診断されたばかりの糖尿病者の中には血漿から抽出されるインシュリンが正常人よりも明らかに多い例があるという。

《現代でいうところの、インシュリン抵抗性のある状態ですね》

また、興味あるのはボストンのアントニアーデス等の報じているように、正常人の血漿インシュリンの大部分は血漿中の何らかの物質と結合していて、ブドー糖を与えると、インシュリンの結合型が速やかに減じて、結合していない型のインシュリンが著しく増えるという所見である。

新しい知見は病気の概念を更新して、新たなる問題を提起するものである。

糖尿病でありながら正常人よりも血中のインシュリン値が高いのはどういうことなのか?

それでいてどうして糖尿病のままなのか?

これは果たして血漿中の何らかの物質とインシュリンを結びつける因子と関係があるか?

血漿中のインシュリンを結合型でなくさせる機構が高年型糖尿病の多くの症例ではやられているのか?

これらに対する新しい答こそ糖尿病に対する闘いを有利に展開させ、そして、、、、さらに新たなる問題を提起するのものであろう!

《今回の一節は、現在の検査や診療においても活かされている知見であり、研究開発に携わってこられた人々からのメッセージが伝えられていることがよくわかる内容です》

参考書:インシュリン物語 G.レンシャル・G.ヘテニー・W.フィーズビー著 二宮陸雄訳 岩波書店 1965年発行 

 

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